こういった質問をM&A関連会社の面接でよくされました。
M&A仲介とフィナンシャルアドバイザリー(FA 以下、アドバイザリー)の働き方や役割はまったく別物です。
事前に調べておけば問題ない質問ですが、答えられないと一気に準備不足がバレてしまいます。
アドバイザリーと仲介の違いについて知ることは、M&A業界の転職を考える上でも重要な判断材料になります。
面接でムダな減点を防ぐためにも、知っておいて損はありません。
仲介とアドバイザリーの違い、M&A転職における考え方を現役のM&Aブティックファーム社員である私が解説します。
M&A仲介の特徴

M&A仲介の役割は、売手と買手の真ん中に立ちお互いの条件を調整しながら取引を成約まで運ぶことです。
不動産の仲介と同じように、会社を売りたい経営者と会社を買いたい経営者orファンドをマッチングさせます。
両手という買手・売手の双方から手数料をもらうビジネスモデルのため、売手・買手両方の立場に立った交渉が求められます。
売上数千万~十数億円といった比較的に小規模な案件を担当することが多く、成約のスピード感は早い傾向にあるのが特徴です。
着手金を受け取らない完全成功報酬型で依頼を受け、フィー(手数料)も大きくなるため案件担当社のモチベーションは高く保たれます。
一方、買手の要望を聞いたほうが継続して買ってくれるため(売手は一回売ったら、基本的にもうお客にならない)、買手にとって有利な交渉になることもあります。
そのため、仲介は顧客の利益の最大化というよりもマッチング的な性質が強いと言えるでしょう。
M&A仲介を使うメリット
- 成約のスピード感がはやい
- 案件担当者のモチベーションが高い
- 完全成功報酬型
扱う案件が小粒なため、成約のスピード感がはやいです。
通常、M&Aは最終契約・クロージングまで平均で6ヶ月かかるのが相場と言われています。
ですが仲介は扱う規模が小さいため、最短で3ヶ月程度で契約を成立することもあります。
着手金をもらわず完全成功報酬型で行う企業が多いため、着手金の50~数百万を払う必要がありません。
経済的なコストを必要としないため、気軽に使いやすいというのが最大のメリットですね。
M&A仲介を使うデメリット
- 買手に偏った交渉になる
- 腰を据えた取引がしにくい
- 売値が低くなる可能性が高い
買手はリピート客になりやすいため「双方の立場に立って云々」というものの結果的に身体はがっつり買手の方を向く傾向にあります。
完全成功報酬型というビジネスモデルは契約者にとっては成果が出るまで無料で便利なシステムですが、案件担当者にとっては地獄のシステムです。
なんとしても案件を成立させるため、かなりのスピード感で案件が進められてしまいます。
案件が成立しないと報酬が担当者に入らないため「顧客の利益<案件成立」といった図式が成り立ちやすく、売手が不利益を被る可能性があります。
フィナンシャルアドバイザリーの特徴

アドバイザリーは買手・売手どちらかのワンサイドに立ち、顧客の利益最大化を目指します。
M&A計画の立案~クロージング・統合プロセスのとりまとめまで一気通貫で行い、条件実現のための交渉を支援。
売手or買手の片側からのみ手数料をもらうビジネスモデルのため、顧客によりそったアドバイス・交渉が行われます。
売上十数億~数百億円といった中~大規模の案件を扱うことが多く、上場企業やクロスボーダーM&A(海外とのM&A)で登場することが多いです。
そのため、成約のスピードは仲介に比べると遅い傾向にあると言えるでしょう。
一方、アドバイザリーは片側からしか手数料をもらえないビジネスモデルの関係上、手数料が高額になる傾向にあります。
お互いがアドバイザリーをつけるため交渉も長期化しやすく、取引事態がなくなってしまうというリスクも抱えてしまうのです。
アドバイザリーを使うメリット
- 取引の利益を最大化できる
- 余裕を持って取引を進めることが出来る
- 契約者が本気になる
アドバイザリー最大のメリットは顧客に寄り添った提案ができることです。
片側につくため利益相反が起こらず、気持ちよく顧客へ提案ができます。
着手金を頂くという性質から、アドバイザリーにも余裕が出来る上に「着手金を払ったからには成約させたい」という強い意志を契約者が持ちます。
ムダに取引を急がせたり、不当に価格を相手に合わせる必要も生じないため顧客と案件担当者、双方が利益を享受することが出来るのです。
アドバイザリーを使うデメリット
- フィーが高額になる
- 取引が長引く
- 取引が不成立の可能性が高まる
片側からしかフィーをとらないという性質上、フィーが高額になる傾向にあります。
お互いがアドバイザリーをつけて顧客の利益最大化を図るため、折り合いが見つけることが出来ず取引が長期化。
結果的に、仲介に比べて破談してしまう確率も高いと言えるでしょう。
働き方の違いを意識する

このように、M&Aの仲介とアドバイザリーには大きな違いがあります。
スピード感を持って多くの小~中規模案件に関わりたいなら仲介。
じっくりと少ない中~大規模案件に関わりたいならアドバイザリー。
業務内容や立ち位置を理解することで、働き方の違いを知ることが出来ます。
わたしは顧客利益の最大化・規模の大きな案件に関わるという点に魅力を感じたため、アドバイザリーを選択しました。
自己分析等を徹底し、あなたが求める仕事のスタイルにどの程度マッチしているかをしっかり理解し転職活動を進めていきましょう。

M&A転職で利用すべき転職エージェント
M&A業界は専門性が深く、業界を理解するための難易度も高いため業界特化型の転職エージェント利用をおすすめします。
総合型のエージェントでは仲介とアドバイザリーの違いすらわかっていないという場面にも何度か遭遇しました。
コンサル・M&A業界といった特殊かつ専門性が深い分野は専門の転職エージェントでないと太刀打ちできません。
せっかく転職エージェントを使うなら、効果を最大化したい。
少しでも内定を多く獲得したい。
わたしも、そんな想いで「アクシスコンサルティング」や「ムービン・ストラテジック・キャリア」や「
JACリクルートメント」等ハイクラス・業界特化型転職エージェントを利用しました。
利用した感想は、非常に満足のいくものでした。
質の高いエージェントが適切な指導をしてくれたため、面接や転職のコツがわかってきました。
M&A・コンサル業界といった専門性の高い業界への転職をする方にとって、有益なサイトであることは間違いありません。
まとめ
以上が、M&A転職をする際に知っておきたい仲介とアドバイザリーの違いでした。
まとめると、以下の通りです。
- 仲介は成約のスピードが早く小規模案件を扱う
- アドバイザリーは成約のスピードは早くないが大規模案件を扱う
- 仲介は買手・売手の間に立ち案件を進める
- アドバイザリーは顧客の利益最大化を考え案件をコントロールする
こうしてみると、全く違う働き方をしているということがわかります。
M&A業界は専門用語が多く、予備知識がないと満足に面接官と話せないという事態に陥りがちです。
M&Aの転職活動に備え、M&Aの知識や時事ネタを知っておきたい方のため実際にM&Aブティックファームのマネジメント層が日々チェックしている情報メディアをまとめました。
こちらをチェックし、日々業界知識を磨いていきましょう。

仲介とアドバイザリーは役割、働き方が大きく異なります。
この部分を一緒くたにすると、理解が足りていないのが知られてしまうばかりか面接での印象は悪くなってしまいます。
事実、弊社の社長も「必ずアドバイザリーと仲介の違いについては聞くようにしている」とおっしゃっていました。
知っておけば難なく答えを出せる部分で減点をくらうのは、非常にもったいないです。
自身の納得がいく転職のためにも、しっかりと理解を深めてから面接に臨みましょう。